| デザインのコトバ「Meme -ミーム-」 |
| ライター: 蘆澤雄亮 | |
さて、本日は一風変わったコトバをお届けしようかと思います。本日のコトバは「Meme -ミーム-」です。この言葉、なかなか聞き慣れない言葉かと思いますが、そもそもデザインの言葉ではなく、イギリスの動物行動学者であるリチャード・ドーキンスによって提唱された言葉です。文化社会学的な分野でよく用いられています。
まぁ、一見するとデザインと全く関係のないような言葉かと思いますが、これまたモノは考えようでして、デザインを広~く俯瞰してみると、意外な関係性が見えてきます。というわけで、まずはミームそのものについてお話しましょう。 ミームを理解するには遺伝子学について知っておく必要があります。というわけで、まずは遺伝子についてです。遺伝子とは生物の形質を規定する因子であり、DNAによって構成されます。そして、遺伝子はDNAが複製されることによって次世代へと受け継がれます。ウイルスレベルであれば単純な「分裂」によってDNAが受け継がれますが、人間などの生物であれば「交配」によって受け継がれます。と、この辺りは皆様なんとなくご存知かと思います。 遺伝子には、もうひとつ重大な特徴があります。それは「エラー」です。 遺伝子は複製する際に時々エラーを起こします。例えばそれらは、DNA複製のミスや化学物質や放射線照射によるDNAの損傷などによって引き起こされます。そして、エラーを起こし複製された遺伝子は形質的な変化(例えば、突然変異によって緑色のカエルから赤色のカエルが生まれたといったようなこと)をもたらします。これを突然変異(Mutation)といいます。この突然変異は、特にベクトルを持たずに発生するため、多くは環境に適合できずに淘汰されます。ですが、環境に適応できるものはよりその数を増やすかもしれません。例えば、インフルエンザはワクチンが開発され、撃退可能になると、ある日そのワクチンに対して耐性をもつインフルエンザが突如現れます。そして、物凄い勢いで蔓延していきます。これは、インフルエンザウイルスのいずれかが突然変異を起こし、それが環境に対して優勢であったため、種を増やしたと考えることができます。「人間」も長い地球の歴史を考えると、相当なエラーだと考えることができます。かつて地球上でこれほどまでに急速に数を増やした生物はいないでしょう。 この概念を図で書くとこんなカンジでしょうか。
ポイントとしては さて、この話を踏まえ、ミームについてお話しましょう。ミームとは、摸倣子、摸伝子、意伝子と訳される自己複製子のことであり、文化を遺伝子になぞらえたものです。流行、習慣、伝統、掟、仕掛けなどをすべて主体としてとらえ、それが伝染によって複製されていくと考えるものです。 例えば、「電車の中では携帯電話をマナーモードにする」という習慣は、携帯の普及に伴って携帯電話文化の中で突然変異が起こり発生したものであり、皆の意識に埋め込まれることによって種として複製されているという風に考えます。Wikipediaではこんな例が載っていました。 『1840年代後半のアメリカで「ジーパンを履く」というミームが突然変異により発生し、以後このミームは口コミ、商店でのディスプレイ、メディアなどを通して世界中の人々の脳あるいは心に数多くの自己の複製を送り込むことに成功した。』 と、まぁザックリといえば世の中の流行や意識を時系列を交えて系統的・系列的に説明するための考え方がミームである。といったトコでしょうか。さて、この本題です。何故この言葉をデザインの話で出したかと言いますと、デザインもミーム的に考えてほしいからです。 一言でいうと、ミームというのは世の中を俯瞰して見る方法であるといえます。例えば、上記のようにして考えるとポータブルオーディオ製品は下記のように表すことができます。
簡単に説明すると、 ラジカセという系統の中から突然変異(ウォークマンの登場)によってポータプルオーディオが登場した。この突然変異種は環境適応能力に優れ、様々な種を生み出した。その後、ポータブルオーディオも突然変異(iPodの登場)によって汎用性の高いデータ形式で持ち歩くようになった。この汎用性は既存のラジカセやコンポ、PCなどとの相性がよく(環境適応能力が高く)、様々な種を生み出した。さらに、ハードウェアの突然変異(iPod Shuffleの登場など)によって、ハードウェアの形態にも様々な変化を及ぼした。 といったような説明をすることができます。このようにして考えると、時代の流れとデザインの変遷が一連の流れのように把握することが出来ます。ただし、この流れ自体は主観的なものであるので、必ずしもこのような見方が正しいとは限りませんし、視点を変えれば全く違う見方もできます。ですが、これをもっと細かく見ていくと、次にどのようなアクションを起こすべきかが何となく見えてきます。新しい流れを作るべく突然変異を起こす時期なのか、突然変異によって発生した種が繁栄する時期なのか、このあたりが何となく見えてくるのではないでしょうか? 例えば、上記の例であれば、形態の変化の流れはそれなりに種が増えてきたので、そろそろ突然変異が起こってもおかしくはない時期だと考えられるでしょう。おそらく、次に突然変異が起こるとすれば、ネットワークに関連した突然変異が起こるのではないでしょうか?きっとどこかの企業で、もうすでに開発が行われているでしょう。 さて結論ですが、今回Memeを用いて言いたかったことは、「時に俯瞰して世の中を見ることは重要だ」ということです。 何かをデザインする場合、バージョンアップという考え方で物事を進めるべきか、イノベーションという考え方で物事を進めるべきか迷う場面というのは多々あるかと思います。特にイノベーションの場合、それは莫大な投資を必要としたりするので、決断するのにとても勇気が要ります。ですが、イノベーションにもやはりやるべき瞬間があると思います。その瞬間を考える一助としてMemeという考え方は非常に有効だと思います。なんというんですかね?StreamDesignとでもいうのでしょうか。一製品にとどまらず、大きな"流れ"の中でデザインを考える、もしくは大きな流れをデザインする。こんなことも重要なのではないでしょうか? と、こんなことを書きながらも、実は自分自身に言い聞かせたりもしているワケですが、一度この機会にMemeという考え方を用いて考え方を整理してみるのもよいかもしれません。 ではまた。
This Work is licensed under a Creative Commons Attribution-NoDerivs 2.1 Japan License. |
| < 前へ | 次へ > |
|---|

さて、本日は一風変わったコトバをお届けしようかと思います。本日のコトバは「Meme -ミーム-」です。この言葉、なかなか聞き慣れない言葉かと思いますが、そもそもデザインの言葉ではなく、イギリスの動物行動学者であるリチャード・ドーキンスによって提唱された言葉です。文化社会学的な分野でよく用いられています。


