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ZUAN図案の吉田です。浅葉さんの志を受けてこの会をご一緒に創り、事務局長として会が順調になるまではと、講演会企画準備、会員誌Web Magazineのライター、カメラマン、編集まで一人でやることになってしまいました。現在は多くの方々の援助を受けられるようになりましたが、最初の頃は無謀な挑戦をしたものだと後悔しきりでした。ところが実際にやってみると面白い、楽しい、素晴らしい。なんといっても、絶対会えなかったであろう人憧れの人に活動を理由に直接お会いでき、打ち合わせ取材のついでにあんな事そんな事まで、皆さん親切でやさしい事をいいことに聞き放題勉強し放題。気がついたら私が一番得をしていました。
そこでお詫びと言ったらなんですが、Web Magazineで書ききれなかった事や、今になって繋がって分かった事など、現代の兼好になったつもりで、徒然に「ずあんな日々」と題して「普通だから読みやすい分かりやすい」と、誉められているのか何だか分からない私流の文章で発表させていただくことになりました。第一回のテーマは「アイデアのひねり出し方」です。
ずあんな日々 第一話「アイデアのひねり出し方」(前編)
誰だってアイデアが出なくて困った経験があるはずだ。学生でもサラリーマンでも「コンセプト」やら「プレゼンテーション」なんて言葉が輸入されてからは大変になったし、主婦だって毎日三食の献立を考えるのは大変だろう。特にクリエイターを生業としてしまったら、アイデアが出ない時は大変どころか生き地獄、行き詰った時は透明人間になったり修行と称して国外逃亡を図ったりしてしまうのである。そして私がその一人なのだ。だいたい「じゃあ、明日朝一でヨロシク」なんて言葉が通るこの業界がおかしいとは思うのだが…。
小学校中学校時代、私は神童だった。しかし、通信簿に「軽率だ、落ち着きがない」と書かれ、高校では唯一の答えだけを求められ、大学で教授の長話を聞くうちに、あの自分勝手で無責任な閃きパワーは跡形もなく消え去ってしまったのである。
つい最近も社長でADでもある栗林さんに「吉田さんは頭固いからな~」と言われたばかり。普通ならここで腹を立てるところだが、実際社長ADはアイデア出しが早いし、且つ多いから言われてもしかたがない。打ち合わせの帰り道、ずっと黙っているからどうしたかと心配していると、急にアイデアを話し始めることがあるくらいだ。「どうしたらできるようになるんですかね」と尋ねると、「電車でも歩いていても風呂に入っていても考えているんですよ」という返事。それだったら私だってエレベーターやトイレでも考えているのだから納得できない。なにか方法が、違いがあるにちがいない。もちろん経験の積み重ねで引き出しが多くなっているということはあるだろうが…。
そこで思い出したのがスポーツ番組で聞いた「ショートカット」の話。最近野球の解説も根性とかの精神論から脱して理論的になってきた。そうした新時代の解説者の話であるが、「時速140キロでやってくるボールを一瞬の判断で決めて動作するには、通常の言葉で考えるやり方では到底間に合わない。そこで練習を繰り返すことで、頭の中にショートカットができて、一瞬の間に判断し体が始動して対応できるようになる」という事で、脳内のシナプスに近道ができるという訳らしい。常人とは違う思考回路が別にできるという事なのだろう。そういえば、C.I.デザインで有名な勝岡重夫さんも講演会で「コンセプトやら説明やらは、実は作品ができた後で考えるってこともあるのですよ」とおっしゃっていたっけ。『言葉に依らない別思考回路』みたいなものが相当発達しているという事か。勝岡さんはクリエイティブの話になると夢中になって真剣になるけれど、楽しそう。何か俗世間とは違う、純粋ともいえる回路のスイッチが入るという感じである。風貌と相まってデザイン寺の和尚さんみたいだ。
芸術家・クリエイターは世間から「ちょっと変った人」と見られがちだが、別の思考回路や別次元の感性があるという点では一理あるかもしれない。私にもあったあの鋭い感性は、世間社会に気を使って無理に「大人」になろうとした過程の中ですり減らされて消え去ったのだろう。という事は今流行の「原点回帰」、純粋な子供時代に戻ればいいのか。半ズボン履くのか、う~ん、アイデアが出ない。
ここまでで終わらないが「ずあんな日々」である。アイデアのスピードがマッハであることに驚いていてはいけない。それ以上の『光速』みたいな人を私は知っている。(つづく)
(写真:勝岡重夫氏 勝岡邸にて 2007) |